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1on1について誰がなにを言っているのか調べてみた

1on1チームマネジメントアジャイル開発リサーチ
目次

1on1についての記事を書こうと思い、まずはAIエージェントに下調べを頼んでみました。「国内外の著名人やバズった記事で、1on1に言及しているものを洗い出して」というお願いで、海外・国内・アジャイル界隈の3方面に調査エージェントを走らせて、集まった言及は約60件。

ちなみに、アジャイル界隈の主要な言及として自分の過去記事「1on1から始める、その前に」が検出されました(なんだこの気持ち)。

調べてみると、思っていた以上に景色が広かったので、調査結果そのものを共有します。「誰が・どこで・なにを言っているか」のリサーチノートです。同じテーマで書きたい人・話したい人は、ここから一次情報にたどってもらえたら嬉しいです。

海外編1: 1on1論の古典たち

シリコンバレーのマネジメント論は、長いことほぼ一枚岩で1on1を推奨してきました。その源流たち。

  • Andy Grove(Intel元CEO)『High Output Management』(1983) 1on1論の原典。「90分の1on1が部下の2週間分の仕事の質を上げる」。頻度は部下の習熟度(task-relevant maturity)に応じて変えるべき、という考え方もここから。
  • Ben Horowitz(a16z)「One On One」/『HARD THINGS』 1on1は「従業員のための場」。アジェンダは部下が持ち、マネージャーは10%話して90%聞く。目的は「最良のアイデアと最大の問題が、対処できる人に届くこと」。
  • Kim Scott『Radical Candor』(2017)/「How to Have Effective 1-on-1s」 週1時間・安易にキャンセルしない。「二つの耳と一つの口」で聞くことを重視。
  • Julie Zhuo(元Meta デザインVP)『The Making of a Manager』(2019) 1on1を「マネジメントの最重要ツールの一つ」として、新任マネージャー向けに型を解説。
  • Camille Fournier『The Manager’s Path』(2017) エンジニアリングマネジメントの定番教科書。1on1を「最も重要な定例ミーティング」と位置づける。
  • Lara Hogan「One-on-One Meetings Resources」 初回1on1でBICEPS(帰属・改善・選択・平等・予見可能性・地位)というコアニーズを把握するアプローチ。EM界隈で定番のリソース集。
  • Michael Lopp(Rands)「The Update, The Vent, and The Disaster」 1on1を「アップデート/ベント(感情の発散・解決不要)/ディザスター」の3類型に分けるフレーム。Hacker Newsで定期的に再浮上する定番記事。
  • Manager Tools(Mark Horstman)「O3ガイド」 週1回30分(部下10分/上司10分/キャリア10分)の構造化フォーマット。17.5万人の調査から「週1実施は結果と定着率が平均8%改善、月1回は逆効果」と主張。

海外編2: 企業ガイドと研究者

  • Google re:Work「マネージャー向けガイド」 Project Oxygen(効果的なマネージャーの8つの習慣)研究に基づく、コーチング的1on1のツール群。
  • GitLab Handbook「1-1」 完全リモート企業の1on1運用を全公開。推奨アジェンダは他社のテンプレートとしてよく参照される。
  • Steven Rogelberg(UNC Charlotte教授)「HBR: Make the Most of Your One-on-One Meetings」/『Glad We Met』(2024) 1on1を単著で扱う数少ない学術書。運営不備の1on1は部下の機能的・感情的な断絶リスクを高める、と研究ベースで論じる。
  • MIT Sloan Management Review「Five Ways to Make Your One-on-One Meetings More Effective」 頻度の一貫性・部下主導アジェンダ・傾聴・キャリア議論・フォローアップの5実践。

海外編3: 2024年以降、「聖域」への異論

長らく揺るがなかった1on1に、ここ数年で著名CEOたちから異論が出はじめています。今回の調査でいちばん動きが激しかったゾーン。

  • Shopify(2023)「3人以上の定例会議を一括削除」 32万時間分の会議を削減した一方で、1on1は削除対象外。このときはまだ1on1は聖域側でした。
  • Brian Chesky(Airbnb CEO, 2024)「1on1モデルには欠陥がある」 密室で不満を聞き続けるとCEOがセラピスト化し、組織で共有すべき課題が閉じる、と批判。短いやりとりの頻度を上げ、決定者が明確な複数人ミーティングを推奨。
  • Jensen Huang(Nvidia CEO, 2024〜)「直属の部下55〜60人と1on1をやらない」 全員に同じ情報を同時共有し、「問題をみんなの前に出して全員で共同設計する」方式。
  • Ron Carucci「HBR: Why Senior Leaders Should Stop Having So Many One-on-Ones」(2025) 経営幹部レベルでは1on1に意思決定が閉じる弊害を指摘し、1:2〜1:3のクロスファンクショナルな場への転換を提案。全否定ではなく階層別の使い分け論。
  • Michael Roberto(経営学者)「Chesky発言への反論」 透明性の価値には同意しつつ「多くの従業員は私的なコーチングの機会を必要とする」。「やるか否か」ではなく「どう活用するか」だと整理。
  • Jason Fried(37signals)「We use Basecamp. We don’t have meetings.」 1on1に限らず定例ミーティング文化全般への懐疑派として、非同期・書き込みベースを貫く古参。

日本編1: ブームをつくった人たち

日本の1on1ブームは2017年、2冊の本の同時期刊行で点火しました。

  • 本間浩輔(元ヤフー)『ヤフーの1on1』(2017、2023増補改訂)/「ヤフーが1on1を企業文化になし得た理由」 日本ブームの震源地。50以上の人事施策の中で1on1だけが現場で効果を実感されて残った、定着まで約5年かかった、という一次情報が貴重。
  • 世古詞一『シリコンバレー式 最強の育て方』(2017) 1on1本のもう一方の柱。「テクニックより関係の質」「まず上司自身が良質な1on1を体験する」。
  • 中原淳(立教大学教授)「1on1の目的は『ガス抜き』か『素振り』か『成長支援』か!?」 1on1は複数の目的が混在する「多面体」であり、目的を明確にせず形だけ輸入すると失敗する、という学術側からの整理。
  • 曽山哲人(サイバーエージェント)「導入から11年をふりかえる」 抜擢文化の会社が1on1を11年続けてきた実践録。
  • サイボウズ「ザツダン」 離職率28%時代に始めた月1回の雑談面談。「見えない不満の大半は情報不足が原因」という発見から情報公開の文化へ転換した話。あえて「1on1」と呼ばないのが面白いところ。
  • メルカリ「自由すぎる1on1」 「必要な時に、話したい人と、自由に」の最小ルール型。
  • リクルート「よもやま文化と1on1研修」 社内文化「よもやま」を土台に、1on1研修を外販するところまでノウハウ化。

日本編2: 批判・失敗談・揺り戻し

導入が一巡した後、批判や失敗談の記事がバズるようになります。論点はかなり共通しています。

日本編3: AIと1on1(2025〜)

アジャイル界隈編: 海外

アジャイル・スクラムの文脈では、一般的なマネジメント論とはすこし違う軸で1on1が議論されてきました。

  • Esther Derby「One-on-One Meetings with Self-organizing Teams」 自己組織化チームにおいて、進捗確認としての1on1を明確に否定。「マネージャーの頻繁な個別介入自体が、チームがまだ指示を必要としているというシグナルになる」。
  • Scrum.org公式フォーラム「Scrum Master conducting 1-1」 スクラムマスターは1on1をすべきかで実践者が真っ二つ。「1on1は密室・秘密・疑心・えこひいきを生み透明性を損なう」派と「心理的安全性が低い環境では有効」派の応酬が、この論点の縮図になっています。
  • Marty Cagan(SVPG)「Coaching Tools - The One on One」 一方でプロダクトマネジメントの文脈では強い推進派。1on1の主目的はPMの成長支援、最低週1回30分、新任には週2〜3回。
  • Johanna Rothman「Managing One-on-One」 1on1をアジャイルのライフサイクルを補完する管理実践として支持する立場。
  • Petula Guimaraes「Scrum Master and one on ones」 SMの1on1を支持しつつ、「セラピストではない」「チーム全体で解くべき問題を個人で直そうとしない」といった注意点を列挙。

なお、Team TopologiesやSpotifyモデルの文脈では、マネージャー×個人の1on1への直接言及は(調べた範囲では)見つかりませんでした。

アジャイル界隈編: 国内

国内は実践報告から代替プラクティスの発明まで、バリエーションが豊かでした。

調査から見えた傾向(ファクトベースで4つだけ)

リストを眺めて見えてくる傾向を、事実の範囲で4つだけ置いておきます。

  1. 時系列: 1983年の原典から40年、海外では1on1はほぼ「聖域」だった。会議を32万時間削ったShopifyですら1on1は残した。その聖域に2024年以降、Chesky・HuangらCEO層から異論が出はじめた。
  2. 立場と主張の相関: 不要論を唱えているのはほぼ「直属の部下が数十人いる超大規模組織のトップ」。推進しているのは現場マネージャー・研究者・HR。どの立場から言っているかで、主張がかなりきれいに分かれる。
  3. 日本の論点は「運用」: 海外の異論が透明性・情報サイロといった構造の話なのに対し、日本でバズる批判は「詰め会化」「進捗確認化」「1on1おじさん」といった形骸化の話に集中している。実施率55.7%・3人に1人が効果実感なし、という数字がその背景にある。
  4. アジャイル界隈は一段メタ: 「どうやるか」ではなく「そもそも1on1という形式はチームの透明性・自己組織化と両立するのか」を10年以上前から議論していて、Peer 1on1・トライアングルトーク・ゆるい1on1・ふりかえりの日常化など、代替や再定義の発明が多い。

まとめ

  • 1on1の言及を国内外・アジャイル界隈の3方面で約60件調査した
  • 海外は「40年の聖域」に2024年以降CEO層から異論が出はじめた局面、日本は導入一巡後の形骸化と揺り戻しの局面、アジャイル界隈は10年以上前から一段メタな議論をしていた
  • 一次情報のリンクを貼ったので、気になったものはぜひ原典へ

このリストが、1on1について考えたり書いたりする人の足場になれば嬉しいです。使ったよーと教えてくれたら勝手に喜びます。

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